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きら★びと - 大西恒平さん(「週刊少年ジャンプ」編集長)完全版

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記事ID:0029334 更新日:2022年8月30日更新
きら★びと - 大西恒平(「週刊少年ジャンプ」編集長)完全版

現在のお仕事を教えてください

現在ジャンプには3人の編集長がいるんですが、僕はメディア担当の編集長として、ジャンプ作品のアニメ・実写化、グッズの製作などのメディアミックス業務を統括しています。

漫画編集者とは、作家との作品打合せなどのマネジメントのほか、作品や作家の代理人・代表者として、映画会社やアニメ制作会社、おもちゃ会社やゲーム会社など様々な方々とやり取りをする、言うなればマネージャー兼プロデューサーのような仕事です。

以前は担当編集者が一人で、漫画もメディアミックスも全て担っていましたが、僕が現職に就いて、漫画担当とメディア担当の2名体制を軸としたチームを作りました。

漫画編集者になろうと思ったきっかけを教えてください

特別なきっかけは無いです。普通の学校に通って普通の生活をしてきました(笑)。大学も法学部専攻でしたし、たとえばメディア研究会のようなものに所属したこともありません。

漫画や本は好きでしたので、記念受験的に出版社を受け、たまたま集英社に受かりました。

当初は、グラビアから政治までさまざまなことが出来そうな「週刊プレイボーイ」を志望していましたが、配属されたのはジャンプ編集部でした。そこで良い作家さんとの出会い等もあり、それからは週刊少年ジャンプ一筋で、現在は所属して22年目になります。

「漫画編集者」と聞くと、締め切りを守らせる鬼のようなイメージがありますが、実際のところどうですか?

​連載中は毎週、作家と一緒に話を考えて、原稿が描き上がったら受け取りに行くという作業を繰り返します。掲載を楽しみにしてくれている読者がいますので、締め切りは絶対です。

作業が止まってしまわないように、締め切り前は編集者も一緒に泊まり込んで話を考えたり、絵の仕上がりを監視することもあります。作家からすると鬼に見えるかもしれませんが(笑)、そこは仕事なのでこちらも厳しくやっています。

作家と意見がぶつかることはありますか?

自らはクリエイターではない編集者が作家に意見を言うわけですから、もちろん意見がぶつかることもあります。ですが、信頼関係が築けていれば相手もちゃんとアドバイスを聞いてくれますし、結果的に良い作品もできます。

作家も様々なタイプの方がいますので、相手に合わせた関係を一から築いていく必要があります。その中でも一番大事なことはやはり、「作家の才能を信じること」です。信じることが信頼関係を築くための入り口です。

ちなみに上司や先輩は、あまり事細かくは教えてはくれません。「自由にやれ」と、基本的には新人編集者は野放しです。

どういったところに作家の才能を見出しますか?

何にポイントを置くのかは、編集者によってバラバラなんですが、僕は描かれているキャラクターが生き生きとしていれば、絵がどんなに下手でも、話の流れが支離滅裂でも才能があると考えます。

個人的にはあまり「ジャンプっぽい」という言葉は好きではありません。「ジャンプっぽい」ということは、既にジャンプに存在しているということにも繋がってしまうので、僕は「ジャンプっぽくない」ものの方に、今までにない価値観が眠っていると思います。

「銀魂」の空知先生も「鬼滅の刃」の吾峠先生も、連載前は皆から「ジャンプっぽくない」と言われていましたが、僕は絶対にヒットすると思っていました。

大西さんといえば「銀魂」の初代担当として有名ですが、連載までの道のりを教えてください

作家との出会い方は大きく分けて2つあります。1つは「持ち込み」、もう1つは「漫画賞への投稿」です。持ち込みの場合、作家が掛けてきた電話を取った編集者が担当する権利を得ます。一方漫画賞の場合は、若手の編集者から順番にドラフト形式で作家に連絡を取る権利を得ます。「銀魂」は後者で、作家と出会って2年ほどかけ連載にこぎつけました。

連載するためには、年に数回実施されるコンペに通らなければなりません。上司たちの中には「まだ実力不足だ」という意見もありましたが、編集部には若い編集者のセンスを大事にするという文化もありますので、それに上手く乗ることが出来ました。

上司から「実力不足」と言われた時、どんな気持ちでしたか?

センスが古いんじゃないかと思いました(笑)。上司の言うことを黙って聞いているだけでは仕方ない仕事ですし、連載にこぎつけてしまえばこっちのものなので、どうやれば上司を納得させられるか色々頭を悩ませました。

ただ逆に今となっては、編集長になった僕のことを、部下たちは同じように思ってるかもしれませんけどね(笑)。

皆に「どうせ売れないだろう」と言われていた作品を、自分がヒットさせられた時は、最高に気持ちが良いです。大変な仕事ではありますが、その喜びは何物にも代え難いです。

見事「銀魂」は大ヒットし、実写化も2度されていますよね。漫画としての人気が高いほど実写化が難しいと聞きますが、いかがですか?

「銀魂」の実写映画も、僕が中心となって関わりました。もともと実写化に対しては会社もあまり前向きでは無かったんですが、個人的に福田監督と作品との組み合わせには可能性を感じたので、作家と相談し実現にこぎつけました。

「銀魂」は作家と一緒に最初からずっと作り上げてきたので、原作ファンの気持ちが理解できました。ですのであくまでファンには、「実写化させていただきます」という丁寧なスタンスで宣伝展開を考えました。

もちろんそれでも実写化を嫌う方もいらっしゃいますが、今まで作品を知らなかった人にも知ってもらえる貴重な機会なので、作品をより大きくするために、是非やってみたいという気持ちがありました。

今は昔と違って雑誌に掲載しているだけでは、中々ヒットさせるのも難しいです。そこでアニメや映画のように、小さいお子さんにも手に取ってもらいやすい媒体を活用することが大事になっています。そういう意味でメディア担当の役割は、より重要になってきています。

「鬼滅の刃」はアニメ化されて幼児や大人にも人気が広がりましたよね

当初は、連載一話目で親兄弟が殺される残酷なストーリー内容なので、あまり子供には受け入れられないのでは、とも思われていました。

漫画は本当にマーケティングが難しいジャンルです。経験だけで作っても、ヒットは中々厳しいです。そこには今までにない、新しい価値観が求められます。だから僕たちは、若い作家や若い編集者の新しいセンスに期待します。若い編集者や作家に、漫画作りだけに打ち込める環境を整えてあげることが、編集長である僕の今の仕事になります。

漫画家や漫画編集者を目指す人にアドバイスをお願いします

絵だけを練習していても、良い漫画は描けません。例えば、スポーツが終わった後に飲むポカリの美味しさは、実際にそれを体験したことがないと分からないように、日常でリアルな経験をどれだけ積めるか、そしてそこからどれだけ想像力を広げることができるかが大切になります。

編集者に関しては、あくまで「作家という一人の人間」の担当であり、「作品というモノ」の担当ではありません。ですので、作家との間に信頼関係を築けるかが何より大切になります。そこでは、今までの人生で周囲と人間関係を築いてきた経験が求められます。僕自身、小中高といろんなタイプの人間がいた地元の公立校で過ごせたことで、相手に合わせた接し方、バランス感覚のようなものが養えたと思っています。

漫画は「エンターテイメント」です。自分の頭の中にどんな面白いものがあっても、読者に伝わらなければそれはゼロと同じです。編集者も作家もまずはその力を磨かなければなりません。どうやったら読者に面白さが伝わるか、そして好きになってもらえるか。全ての根本は人間関係だと、僕は思っています。

今後の目標を教えてください

どんなに人気がある作品でも、いつかは終わります。ですから面白いものを作り続けない限り、雑誌は終わってしまいます。つまり永久に新しく面白いものを作り続けることこそが、我々編集者の使命です。僕は今後もそれをやっていきたいと思っています。

最後に、本日ご覧になった「第15回書道パフォーマンス甲子園」の感想をお願いします

今回初めて生で拝見させて頂いたんですが、その想像以上の迫力と美しさに大変感銘を受けました。
そして何より選手の皆さんの書道や仲間に対する純粋な気持ちに、強く心を揺さぶられました。
「いま君たちは生涯忘れられない、掛け替えのない瞬間を過ごしているんだよ!」と、オジサンは思わず言ってあげたくなりました(笑)。


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