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キラビト - 神田鯉花さん(講談師)完全版

8 働きがいも経済成長も
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記事ID:0038506 更新日:2023年11月29日更新
キラビト -神田鯉花さん(講談師)完全版

プロフィール

神田鯉花 かんだ りか

講談師

 

1994年 愛媛県四国中央市金生町下分生まれ

東京都在住

川之江高校→京都産業大学国際文化学科

 

日本講談協会、落語芸術協会所属

2018年三代目神田松鯉(人間国宝)に入門

師匠の鞄持ち、前座を経て、今年2月に二ツ目に昇進。寄席や地方公演に出演中。

兄弟子には、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの講談師・神田伯山がいる。

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落語と講談と私

よく落語と比較される講談ですが、会話調の話でお客さまを笑わせる落語とは違い、講談は「ト書き」と「台詞」で物語を読み聴かせることを主としています。講談では、張扇(はりおうぎ)と呼ばれる道具で台(釈台)を打ちながら、場面転換や物語の盛り上がりなどを「音」で表現します。また、七五調のリズムでテンポよく話が進んでいくことも講談の特徴です。

そんな講談に魅せられた私は、2018年に三代目神田松鯉の元へ入門。今年2月に、前座修業を終えて二ツ目に昇進し、現在、寄席や地方公演に出演しています。

 

惻隠の情に救われた

大学を卒業後、東京の会社に事務職で就職しましたが、これが全く向いていませんでした。しくじりまくって半年で会社を辞め、アルバイトを転々としました。でもやっぱりしくじってしまい「もう、どうやって生きていけばいいんだろう」と悩んでいました。そんな時、アルバイト先の居酒屋で年配のお客さんに講談を知らないことを馬鹿にされ、「だったら聴いてやるよ」と寄席に行ったのが、私と講談の出会いです。

師匠の神田松鯉は、よく「講談には惻隠(そくいん)の情がある」と言います。弱い立場の人に寄り添ったり、人を元気にしてくれたりする話が多い講談は、しくじりまくって辛かった私に元気をくれました。どんどん講談にはまっていったある時、師匠の「天保水滸伝 笹川の花会」という講談を聴いて、そのあまりのカッコ良さに「あ、入門したい」と思っちゃったんです。と同時に「でも、何をやってもしくじりまくる自分が講談なんてできるはずがない」と、何度も葛藤しました。

ある時、寄席で「神田松鯉はもう弟子はとらないと言っている」という話を聞き、私の心が決まりました。

 

前座修業は大変

弟子入りすると、3ヶ月の見習い期間を経て「前座」になります。ここで初めてお客さまの前で講談が出来るようになるのですが、同時に4年間の「前座修業」が始まります。

前座修業では、楽屋で師匠方へのお茶出し、着物の着付けや片付け、出番終わりの高座返し(舞台転換)をします。「お茶を出すくらい簡単でしょう?」と思うかもしれませんが、これが案外難しい(苦笑)。お茶を出すタイミングを間違えると、師匠方の機嫌を損ねることになりかねません。また「ぬるいお茶」「あついお茶」など、皆さん好みが違いますから、それも覚えるのが大変でした。よく先輩から「お茶を出すタイミングが違う」「相手の立場になって物事を考えなさい」と叱られたものです。

ある時、とある師匠にしくじってしまいました。たまたまいらっしゃった伯山兄さんが、すかさず「うちの妹弟子がすみません」と場を収めてくださり、事なきを得ました。兄弟子を始め周りの色んな人に助けられながら、今年2月、何とか4年間の修業を終え、二ツ目に昇進しました。本当に感謝をしております。

厳しかった師匠方も二ツ目になると優しくなります。「みんな怒りたくて怒ってるわけじゃない。敢えて厳しくしていたのも優しさの一つだった」と、そのとき初めて気付きました。

 

向山古墳と紙のまち資料館

子どもの頃の遊び場のひとつが向山古墳でした。当時はまだ発掘が進んでいなかったので、行き止まりの洞窟の壁を見ては、その先に何があるのか考えてワクワクしていました。講談には、長い話を何席にも分けて連続で読む「連続物」というものがあります。うちの一門は特にこの連続物を得意としており、私も大好きです。「続きが気になる」とう意味では、古墳と講談には通じる何かがあるのかもしれませんね。

実は、師匠が若い頃に使っていた張扇が、紙のまち資料館に展示されているんです。幼稚園や小学校の遠足で資料館にいった時、私も何度も目にしていました。ぜひ皆さまも、一度ご覧になってください。

三代目神田松鯉が小山陽時代に使っていた張扇(紙のまち資料館所蔵)

三代目神田松鯉が小山陽時代に使っていた張扇(紙のまち資料館所蔵)

 

しくじってばかりの人へ

幼稚園から高校まで、私は周りに溶け込むタイプではありませんでした。周りから浮いている自分がとても辛かったです。社会人になってからもしくじってばかり。

でも、生きてさえいれば、別のところに素敵な出会いがあります。別の仕事、別の仲間、「生きていて良かった」と思える世界がきっとあります。ただそれは、生きていなければ見つけることはできません。その場から飛び出したからこそ見える景色があります。私にとってそれが「講談」でした。

 

皆さまの人生を豊かに

日々、周囲の方々やお客様への感謝の気持ちを忘れず、真打を目指してこつこつと講談を読み続けていきたいと思います。

寄席では講談はもちろん、落語や浪曲など、日本が誇る素晴らしい演芸が楽しめます。演芸は人生を豊かにします。皆さま、どうぞ寄席にお越しください。機会とご依頼がありましたら、ぜひふるさと四国中央市で、私の講談をご披露させていただきたいと思います。

人間国宝・神田松鯉師匠と鯉花さん(鯉花さんのInstagramより)

人間国宝・神田松鯉師匠と鯉花さん(鯉花さんのInstagramより)


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