本文
晩秋から初冬へ
秋も11月半ばを過ぎると、晩秋というより初冬の風の方が強くなる。家に着くと、まずこたつのスイッチを入れ、ビールとは縁遠くなり、焼酎の湯割りとなる。夕方5時を過ぎると、外は釣瓶(つるべ)が落ちるように、すぐ暗くなる。だんだんと一年の終わりが近づいてきているのを実感する。明日への夢や希望より、この一年に亡くなった親しい人や、やろうとしてやれなかったことが、挽歌(ばんか)の歌詞のごとく胸中を去来する。そして後ろ向きになりがちな心を、必死の形相で一歩前へと石炭を燃やすように、火をつけるのである。
みんなそうして頑張っているのだ。木々は葉っぱを落として、枝だけが寒そうに、けれども知らん顔をして平然と立っている。次の春にはまた、葉っぱをいっぱいつけるのである。過ぎ去ったことは心の奥深くに沈め、眼光鋭く前を見つめよう。
春よ来い。早く来い。歩き始めたみいちゃんが、おんもに出たいと待っている。秋が来て、冬が来て、それから春が来る。そして暑い夏がまためぐって来る。
令和元年12月1日
四国中央市長 篠原 実