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真夜中の錯覚
年が明けて、当たり前に、年数を数えていく。夕方、親しい人と少し食事をして、そのまま、布団の中に入って、眠ってしまった。夜中の12時過ぎたころ、目が覚めてしまった。消灯用の明かりの中で、じっと両手の手の平を眺めてみた。両手とも昔となんら変わらない手相がある。私の手相は、線が割とはっきりしている。
若かりしころ、夜中近く、町をブラブラしていたら、易者の人に、「にいちゃん、お金いらないから、手相みせてみなさい」と声をかけられたことがあった。まだ何の知識もないころであったが、その易者から、「あなたは、将来宗教家になりなさい」と言われた。他のことは何にも覚えていないが、その言葉だけ、あれから、いろんなことがあったが、夢幻のごとく、頭に残っている。
今年もまた、新しい友達がいっぱいできるだろう。反対に世話になった人、長く付き合ってきた人も失くしていくことだろう。でもでも、みんな私が、手の中にいっぱい持ってきたありがたい人である。抱えられるだけ抱えて、今年も頑張ろうと思った。なんでもない両手の手のひらが、大変いとおしく思えた。
令和3年1月1日
四国中央市長 篠原 実