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まず最初に、元旦に発生いたしました「能登半島地震」により、多くの尊い命が失われ、犠牲となられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
被災地においては、今もなお、多くの方が不自由な避難生活を余儀なくされており、一日でも早く普通で健康な日常に戻れますよう、本市としてもできる限りの支援を行ってまいりたいと思っております。
それでは、令和6年四国中央市議会第1回定例会の開会にあたりまして、令和6年度の施政方針を申し上げます。
まず、防災・減災対策とインフラ整備についてでございます。
これまでの長い歴史を紐解けば、我が国は幾度となく大規模な自然災害を経験してまいりました。そのたびに我々人間の無力さに打ちひしがれ、強いショックを受けました。それでも、将来を見据えて対策を講じ、地域一丸となって立ち向かってまいりました。今回の能登半島地域を含めて、それぞれの地域の皆様方も力を合わせてがんばって明日に向かって立ち向かっていかなければならないと思っております。
本市では今年度、災害発生時においても、適切かつ迅速に非常時優先業務を遂行できるよう、「四国中央市業務継続計画」(BCP)の見直しを行いました。令和6年度では、この計画の実効性を高めるため、訓練等を実施し、災害対応力の向上に努めてまいります。
また、多様化、複雑化する災害等にいち早く対応すべく、最新の装備、資器材を備えたはしご付消防自動車、消防ポンプ自動車及び高規格救急車を導入するとともに、消防団の老朽化した車両4台を更新整備し、地域防災力の一層の充実強化を図ってまいります。
そのほか、避難所における紙製品等の備蓄品の充実を図るとともに、多くの方に利用されているLINEから利用が可能となる「デジタル防災マップ」の導入や、工場内では、機械音等により市の防災告知放送が聞き取りにくい環境となっているため、告知端末機の設置を希望する事業所に対しては、市の負担により整備を行ってまいります。
城山下臨海土地造成事業は、企業用地の確保だけでなく、防災・減災対策効果が期待できるとして実施しております。工事に関しましては、海上部において、護岸の基礎となる石材の投入を開始しているほか、旧川之江漁港部分の埋立てを行っており、令和11年度の完成に向け、鋭意整備を進めてまいります。
三島川之江港は、コンテナ貨物取扱量が堅調に推移しております。大規模災害時における、防災拠点としての環境整備の必要性も高まっておりますので、引き続き上部機関と協議しながら、港湾整備に取り組んでまいります。
国道11号川之江三島バイパスは、人的な又は物的な交流の要として一日も早い全線整備が急がれる重要な道路となっております。また、ご案内のとおり国道11号線のバイパス事業は、本市、隣の新居浜市、西条市とよく似た状況にありますことから、市長、担当部長がそろって、国土交通省の副大臣に会い、状況をよく説明してまいりました。ただ、道路はどうしても時間と莫大な費用がかかりますことから、そのことを踏まえながら要望を行い、整備促進に取り組んでまいります。
また、新法皇トンネルの早期整備につきましても、嶺南地区の活性化やダムの維持管理に資するという観点のみならず、災害発生時における集落の孤立を防止するためにも、先日、県の担当部長のところへ地域の会長や関係者と一緒になってお願いに行ってまいりました。新法皇トンネルの整備事業につきましても粘り強く地域の人と一緒になって努力し、県に対して訴えていく予定であり、その努力が無駄にならないようできる限りお願いしております。ただ、トンネル事業は莫大な費用が掛かりますので明日しようというわけにはいかないため、担当部長を中心にして、さまざまな方法について検討を行ってまいります。
水道は、市民生活や社会経済活動に欠かせない重要なライフラインでありますが、人口減少等による料金収入の減少や、施設の老朽化による更新費用の増大などの要因により、水道事業を取り巻く環境は大変厳しい状況となっております。安全・安心な水を安定供給し続けていくためにも、適正な料金水準への見直しの検討を含め、水道施設の耐震化や老朽化資産の更新を計画的に推進してまいります。また、山間部の地域の方々には、地震等の発生でライフラインが寸断したときのために備蓄の水を用意してほしいとお願いしております。
市民の安全・安心な医療提供体制の構築に寄与する公立学校共済の中核病院の建設につきましては、今年度末までには業者が決定する予定であり、令和6年度は基本設計に加え、既存建物の解体設計及び解体工事にも着手するとのことで、令和10年度の竣工を目指して、着実に具体化を進めております。本市においても、建設に係る側面支援として、渋滞緩和や液状化対策など周辺のアクセス道路の整備のほか、色々な角度から、病院ができたことにより利便性が悪くならないよう、病院を中心とした新しいまちづくりを目指し、景観整備等の検討を進めてまいります。
「四国中央市」は4月1日に20周年を迎えます。
本市が積み重ねてきた歴史と偉大な先人の功績を見つめなおし、市民とともにお祝い出来る記念の事業を実施してまいります。
井原前市長が9年、私が11年で20年の歩みを進めてまいりました。さまざまなことがありましたが、市民の方、議員各位とともに次のステップを目指し成長しております。5月12日の20周年の記念式典では、四国中央市誕生以来、さまざまな分野で本市を支えてくれた方々や各種団体を顕彰して、感謝の意を表したいと考えております。
また、記念事業と位置付けて、既存事業の充実を図るほか、特別事業として、紙に特化したイベントを開催する予定としております。同じく記念事業として進めておりました、市の花と木の制定につきましても、今回、市の花を「ミツマタ」に、市の木を「五葉松」に決定することといたしました。
いずれにいたしましても、この20周年を、新たな出発点となる節目の年として捉え、「将来にわたって住み続けられるまち」を目指し、市政発展に取り組んでまいります。
次に、地域産業の支援・強化についてでございます。
本市の基幹産業である紙産業は、合併以来18年連続で紙のまちランキング日本一を達成するなど、「日本一の紙のまち」として発展してまいりました。
一方、労働力不足が深刻な影響を及ぼしつつあり、本市では、企業や教育機関等との連携のもと、小学生から大学生を対象に、工場見学を実施するなど将来の地元就職を見据えた人材育成事業になお一層取り組んでまいります。
さらにはSDGsを推進し、若者に選ばれ、持続可能な地場産業に支えられる魅力ある都市の実現に向け、各種イベントの開催や新たな企業との結びつきを創出する展示会への出展等、地域を挙げて取り組んでまいります。
DXの推進についても、行政サービスのオンライン化や移動する市役所として今年度導入したマルチタスク車両の機能拡充と強化を図るなど、利便性を高め、誰もが暮らしやすいまちづくりに努めてまいります。
次に、本市の地球温暖化対策についてでございます。
昨年3月に策定した「地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」を基本方針とし、市民の環境意識の向上と事業者に対する支援策の充実を図り、学校施設をはじめとする公共施設の照明設備のLED化を進めるなど、積極的に取り組んでまいります。
市民の暮らしに直結する可燃ごみ処理施設の整備については、地球温暖化問題を世界に先駆け警鐘を鳴らしたノーベル賞受賞者の眞鍋淑郎博士のご意思を引き継ぎ、ごみを燃やさず資源化できるトンネルコンポスト方式の導入を決定いたしました。これにより、温室効果ガス排出量の削減につながるだけでなく、紙産業との連携によるエネルギーの地産地消が実現することとなります。新しい方式となりますことから、今後も議会とともに進めていく必要があり、既存の施設よりも一歩前に進んだ方式となりますので、本市を挙げて本事業を成功させたいと思っております。
次に、人口減少・少子化対策についてでございます。
本市では、人口減少・少子化対策に効果が期待できる施策を強力に打ち出すべく、令和3年度から「人口減少・少子化対策プロジェクト会議」を設置し協議を進めております。令和6年度についても、結婚新生活支援事業など新たに4事業を実施し、若い世代が結婚や子どもについての希望を実現できる社会を目指して取り組んでまいります。
また、昨年施行された「こども基本法」に基づき、子ども、若者に関する施策を盛り込んだ「四国中央市こども計画」を策定するとともに、「第3次四国中央市男女共同参画計画」を策定し、市民一人ひとりが性別に関係なく個性を認め合い輝けるまちづくりを目指してまいります。
さらに、人口減少・少子化対策に資する施策として、シティプロモーションを担当部署が鋭意推進してまいります。その一環として、高校生が主体となったイベント「18っ祭!」を開催し、若い世代の本市に対する誇りや愛着を醸成し、将来的なUターンや関係人口の創出につながるよう市を挙げて取り組んでまいります。
他にも、空き家所有者と、移住希望者を結びつける「空き家バンク」を運用するほか、本市での暮らしを実際に体験してもらう「お試し移住」を実施し、若者世代のUターンなど移住・定住を促進してまいります。
次に、子育て支援として保育施設の運営についてでございます。
保育需要が多様化・複雑化する一方で、急速な少子化が進む中、民間保育施設では、今後の運営に非常に危機感を持っておりますことから、官民一体でのきめ細やかに保育需要に応えていける施策に努めてまいります。また、保育の効率化については、ICT化継続支援事業を実施するなど、民間保育施設に対する運営支援を強化し、安定化を図り、市全体での保育の充実に努めてまいります。
放課後児童クラブについては、待機児童解消に向け、土居小学校児童クラブの整備に着手いたします。併せて、指導員の処遇を大幅に改善し、指導員不足という課題については、なるべく早く対処し、多くの方々から支援をいただき、施設と人員を整備し、子どもたちが安心して通えるように努めてまいります。
また、子育て世代の負担軽減を図るため、今年度に引き続き、学校給食費及び保育園等副食費の無償化事業を実施してまいります。将来を担う子どもの成長を支えるべく、栄養バランスの取れた安全・安心な給食の提供に努めてまいります。
次に、子どもたちの教育環境の充実についてでございます。
夏期の猛暑時における熱中症対策として、屋内運動場への空調設備設置に着手いたします。屋内運動場は、子どもたちの学習の場であるとともに、災害時における避難所など地域コミュニティの拠点としての役割を果たすものとして、安全・安心な環境整備に努めてまいります。
また、GIGAスクール構想の運用が始まり4年目を迎え、本市のICT教育に対する取組は、全国的にも高い評価を受けており、GIGA教育のトップランナーであると自負しております。
今後さらなる教育DXの推進により、教職員の業務改善や働き方改革にも取り組みながら、多様化する児童生徒一人ひとりを大切に、あったかな教育を充実してまいります。
地域活動と交流を促進する施設として天満・蕪崎地区に整備する「北地区交流センター(仮称)」につきましては、身近で利用しやすい施設、災害時の拠点となる施設をコンセプトに、建設に着手してまいります。
次に、福祉分野におきましては、ひきこもりやヤングケアラーなど、従来の制度・分野の枠組には収まらない、複雑化した課題が顕在化しております。
分野ごとでは対応が困難な課題に対応するため、重層的支援体制整備事業を推進するなど、つながり、垣根を越えて、支え合う地域共生社会の実現に向け取り組んでまいります。
また、太陽の家成人部の民間移譲に伴い、児童部については、公設公営による福祉型障害児入所施設として移転新築する予定でございます。令和6年度の工事着工、令和7年夏頃の開設を目指し取り組んでまいります。
以上が、令和6年度の重要施策と主な取組でありますが、これらの重要施策の実現を目指し、編成いたしました令和6年度当初予算は、一般会計当初予算額422億6,000万円と特別会計が271億0,200万円の総額693億6,200万円で、前年度との比較では一般会計で9.4%の増、特別会計では7.8%の減となっております。
需要の減少や物価高騰などにより、本市の基幹産業である製紙産業を取り巻く環境は厳しさを増しており、歳入においては、税収など先行きが不透明な状況ではありますが、市発足20周年を迎える令和6年度を「未来への道標を示す年度」と位置付け、歳出については、能登半島地震を教訓にした防災・減災対策をはじめ、子育て支援、経済対策など積極的に取り組むことといたしました。
四国中央市長 篠原 実