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議員の皆さま並びに市民の皆さまに、私の所信の一端を申し述べさせていただきます。
第3代四国中央市長として、就任後40日余りが経過いたしました。
この間、市内外の皆さまから、たくさんのお声掛けやお手紙など、温かいエールを頂戴し、たいへん恐縮しております。改めまして、私に寄せられている期待の大きさと、市政のかじ取りを預かる責任の重大さに身の引き締まる思いでございます。
昨今、世界経済は過去に類を見ない混迷の中にあり、その事を背景に我が国の政治・経済情勢、そして地方自治を取り巻く環境は、深い霧に覆われた状況が続いております。
そのような中、私に課せられた使命は、一歩間違えると行き先を見失うような深い霧の先にある晴れ間を目指し、「逆風満帆」の精神で勇気を持って前に進みつつ、地域の諸団体や企業の皆さまと知恵を出し合い、市議会や市民の皆さまとの話し合いを重ねながら、本市の未来を拓く取組を積み重ねることであるとの思いを胸に、決意を新たにいたしております。
これまで再三申し上げてきた「子どもたちの心に投資する」ということを、まちづくりの一丁目一番地として、確固たる信念と強い使命感をもち、この職を志した限りは全身全霊を尽くし、職責を全うする覚悟でございますので、どうか議員の皆さま方には、是々非々でのご議論、そして協働の精神によるご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
私は、四国中央市に生まれ、四国中央市の海・山・川の自然と紙産業、そして温かい人の情に育まれました。大学進学により、一旦地元を離れましたが、今は亡き市役所の大先輩からの勧めもあり、こよなく愛するふるさとのために、自身の力をぶつけてみようとの思いから、当時の川之江市役所に奉職いたしました。それから35年有余、公務員としての仕事のほかに、市民活動や地域活動などを通じて、私以上にふるさとを愛するたくさんの方々と出会い、このまちへの思いを共有し、共に汗を流す中で、「我らがふるさとを四国のまんなかで輝かせたい」という思いをより強く熱いものに膨らませてきました。
ご案内のとおり、本市は全国の大半の自治体と同様に、少子高齢化や人口減少問題をはじめとする数多くの課題を抱え、極めて不透明な経済情勢のもとで、地域経営はたいへん厳しい状況にあります。
しかしながら、本市には、法皇の山並みに育まれた森林や豊かな水の恵み、ダムと港湾とともに発展してきた紙産業クラスターと研究・教育機関、そして四国8の字ルートの結節点を有する高速道路網など、困難や逆境を跳ね除け、四国の真ん中「なか四国圏域」の新たな可能性を切り拓く底力と、十分なポテンシャルを先人に遺していただいております。
それゆえに、「消滅可能性都市」などという言葉に惑わされる必要など、全く無用のものであると確信いたしております。これから、四国中央のリーダーとして、このまちの魅力を最大限に引き出し、全国へ、そして世界へと発信しつつ、「市民の皆さまとともに、子どもたちとともに四国中央市の明るい未来を創っていく」と、この場に立ち、改めて決意いたしております。
私は、ひとたび市役所を去って以来、思いを同じくする仲間とともに「市政善進」をスローガンに掲げてまいりました。
そして、「市政善進」へと向かうにあたり「健善颯新(けんぜんさっしん)」「児童歓待(じどうかんたい)」「廃県置州(はいけんちしゅう)」という3つの言葉を大切にしつつ、新しい市政へゆっくりと舵を切ってまいりたいと思っております。
1つ目の「健善颯新」は、「健全で善良な市民自治をめざし、市政運営を清らかに新しくする」ということです。当然のことではございますが、市政には高い透明性が求められますので、私自身が、公平公正に正義感と倫理観を貫く姿勢を大切にし、折り目正しい市政運営を旨といたします。
また、私は、健全で清らかな市政実現のために、市役所内の風通しを良くし、全ての職員が、生き生きと明るく働ける職場環境を整え、笑顔と活気にあふれる市役所づくりを進めてまいります。
2つ目の「児童歓待」は、虐待の反対の意味である歓待という言葉を用いました。私は、子どもたちに「生まれてきてくれてありがとう」という気持ちを全ての市民が持ち、共に真心をもって子どもたちを育むことで、親自身や身近な人に守り育てられた子どもたちが、必ずや四国中央市の未来を切り拓いてくれるものと確信しています。
このことを基礎として、全ての公約の土台に「子どもたちの心に投資する」という言葉を据えております。
このような観点から、私は、夢に向かう子どもたちを応援するため、ふるさとの温かみに包まれて成長できる子育て・教育の環境づくりに努め、子ども目線を大切にした子育て支援制度の創設をはじめとする新たな取り組みを進めてまいります。
3つ目は「廃県置州」ですが、四国中央市が誕生した原点は、当時の道州制の議論の中で、四国州という将来像を描く市民の期待をまちづくりに反映させるところにあると思っております。
その原点に回帰したうえで、観音寺市や三好市との四国まんなか交流協議会をはじめ、隣接自治体との連携・協調のもとに、経済・観光・文化交流の活性化を図り、「四国はひとつ」を牽引するまちづくりを推進してまいります。
また、日本一の紙のまちの海の玄関とも言える「重要港湾三島・川之江港」の海上輸送機能や、高速道路網・鉄道などの物流機能を活かし、四国全域の災害時の応急対策や復旧・復興を瀬戸内側から支える拠点としての役割を果たすべく、社会インフラの整備促進を図ってまいりたいと思います。
以上が、市長就任に際して、私が市政運営の信条とする3つの基本姿勢でございますが、これらを踏まえつつ、今後、私が各分野の政策・施策を推進していくうえでの7つの柱について申し述べます。
まず、1つ目の「子育て・福祉・健康」の分野では、「地域の中で共に子どもを産み育て、地域の大人が幼児に引き出される善性によってつながり、健やかに幸せを分かち合えるまち」をめざします。
子どもたちの心への投資として、安心して産み育てられる産前・産後ケアや、地域ぐるみの子育て支援ネットワークの強化、地域で育む子どもの居場所づくりなどに力を注ぎます。
また、障がいのある方や高齢者などの暮らしを支える施策の充実や介護予防による健康寿命の延伸を図り、だれひとり取り残さない地域での生活支援体制を整えます。
次に2つ目の「教育・文化・芸術」分野では、「誇り高き先人からの学びを基礎とし、多様性と包摂性(ほうせつせい)のもとで磨き合う気風を高め、次世代の可能性に繋げられるまち」をめざします。
義務教育の最適化と高等教育の機能の再構築を図り、だれひとり取り残さない発達支援や不登校対策と最適共育の推進、学ぶ気持ちに寄り添い続ける芸術・文化振興などに努めるとともに、教育DXのさらなる推進と中学校の在り方検討に着手します。
3つ目の「産業・経済・DX」分野では、「紙漉きの原点と無限の可能性を探求し、企業の技術革新と雇用の多様化を支援することで、AI(愛)あるスマートシティを紙から捻り出すまち」をめざします。
創業・起業支援やCNF(セルロース・ナノ・ファイバー)などの新規分野の産業開拓による紙のまちの再生を図り、工業用水などを活用する生成AI用データセンターの誘致活動や女性が輝くコト・モノづくりの支援などに取り組むほか、地域産業の人材確保・定着を図ります。
4つ目の「シティプロモーション」分野では、「オフィスのペーパーレスを超越するコト・モノづくりで、くらしに寄り添う紙のまちのブランディングに磨きをかけ、シビックプライドを高めるまち」をめざします。
映画「書道ガールズ」の中で、高校生が書道パフォーマンスでまちの再生の起爆剤となるというストーリーは、まさにこのまちで実話となって躍進を続け、とうとう大阪・関西万博の檜舞台で「書道パフォーマンス甲子園 in EXPO 」が催される快挙となりました。「紙のまち発」の書道パフォーマンス文化を世界の文化に押し上げるべく、新たな展開を模索したいと思います。
また、SDGsを目指す取り組みの中に、紙産業の底力に根差す新たな事業の可能性を探りたいと思います。
さらには、ノーベル物理学賞・真鍋淑郎博士の顕彰に取り組むとともに、まちづくりに関わる魅力的人材の発掘や移住・定住の促進を図ってまいります。
5つ目の「地域・自然環境・観光」分野では、「地域のつながりを基盤として生活環境やふるさとの自然環境と共生し、循環型社会を追求しながら持続可能な進化系日本一の紙のまちプラス・アルファ」をめざします。
今後の持続可能な地域社会のカギを握る「地域コミュニティの再生」について、市民の皆さまとの話し合いの場づくりに努め、公民館・交流センターの在り方についての議論を深めます。
産官学連携による脱炭素社会への挑戦とエネルギー転換の研究を進めるとともに、山林の資源活用を図ります。
また、海・山・川の豊かな自然環境の保全や魅力の発信に取り組むほか、低山を楽しむ観光客の誘致促進などによる交流人口・関係人口拡大に努めます。
6つ目の「都市基盤・安心安全」分野では、「災害に強く安心安全な都市基盤を整備し、エックスハイウェイの立地を活かして、四県の文化・経済の交流拠点となるまち」をめざします。
生活道路の緊急再生及び維持に取り組むほか、幹線道路の整備促進や社会インフラの安心・安全の確保に努めます。
防災・減災の取り組みを強化し、従来の指定避難所に自主運営型避難所の登録制度を加え、ハイブリッド型の安心避難所運営を目指します。
「お出かけを変える」取り組みとしての地域公共交通の再構築や地域内の移動支援・買物支援などの新たなしくみを検討するとともに、空き家・空き地の適正管理と有効活用に官民連携で取り組みます。
最後に、7つ目の「広域圏・行財政」分野では、浄財を有効活用するための行財政改革や入札制度の見直し、行政DXの推進による足腰の強い財政基盤の確立を図りたいと思います。
また、東予地域の自治体間の横のつながりを大切にするとともに、「四国はひとつ」を遠くに望みながら、隣接4県の周辺自治体間の相互交流を活性化し、「なか四国圏」としての連携・協調にも努めてまいります。
以上、7つの柱立てで、今後の政策・施策について申し述べさせていただきましたが、これらは、一朝一夕に実現し得るものばかりではございません。
また、現在進行中や計画中の事業についても、場合によっては、一度立ち止まって熟考してみる必要もあると考えております。
改めて申し上げますが、4月末の市長就任ということで、本年度の私の市政運営は、予算編成、組織機構、人事配置ともに、基本的には、すでに敷かれたレールの上を、客車・貨車の中をしっかりと整えて牽引する機関車のような役割となります。
しかしながら、その中でも、与えられた条件のもとで、最大限の創意工夫を凝らしながら、ひた走ってまいりたいと思います。
いずれにいたしましても、四国中央市の子どもたちに、「このまちに生まれて良かった」と思ってもらえるよう、全力で市政運営に取り組んでまいります。
そして、政策の推進に当たりましては、私の座右の銘であります「逆風満帆」の精神のもと、本市特有の地域資源と今日までの行政経験を活かし、議員の皆さまのお力をお借りしながら、「市民の 市民による 市民のための市政」を目指し、過去に類を見ないと思われるこの難局を乗り越えてまいりたいと考えております。
結びに、議員各位、そして市民の皆さまお一人おひとりのご理解、ご支援、ご協力を何卒よろしくお願い申し上げ、私の所信表明とさせていただきます。