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藤原製紙所
明治末期頃の創業から今に至るまで、手漉きでの和紙製造を一貫して続ける。当時は障子紙や登記用紙などを製造しており、現在は主に漢字用書道半紙を専門に製作。現在工房唯一の職人である藤原俊二氏が四代目にあたり、紙の乾燥・裁断を担当する奥様と夫婦二人三脚で、1日およそ半紙2000枚分に及ぶ和紙作りを日々続けている。映画「書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」では和紙の手漉き作業シーンの撮影ロケ地として登場した。
匠の書には匠の和紙 100年を越える歴史を 繊細な繊維と共に紡いで
和紙の原材料には主に針葉樹の木材パルプを使用。加えて古紙やマニラ麻、稲わらなどのパルプを状況に応じて配合し使い分ける。手漉き作業の際、漉桁を揺らすのは縦一方向のみ。短い繊維の絡みを技法で調整し、漢字用書道用紙に適した紙のコシを生み出すのだという。古き良き手漉き和紙の貴重な製造工程を間近で学べると、工房には時折地域の学校の子どもたちが社会見学に訪れることも。
一枚一枚手を掛けて作る紙を余さず届けたい
漉いた紙を積み重ねた塊の水気を一晩で切ったのち、一枚一枚剥がして鉄板に乗せ蒸気で乾燥させればようやく完成だ。1回の手漉き作業で出来た紙から取れるのは半紙4枚分。1日にこの作業をおよそ250回繰り返すが、作業中に破れやヨレが発生すると当然その部分は商品にならない。日々の製造工程の中で、どれだけ均等な厚みで無駄のない製品を作れるか。それが最も苦心する部分だという。
最大の特徴はやはり手漉き和紙ならではの独特の「墨付き」だという。書道家やプロのアーティストの中にも愛用者は多い。昔ながらの手漉きで作るため、紙そのものの馴染みも時を経る事でより良いものになっていく点もポイントだ。製造から半年~1年程度の経年で、「書き頃」の紙に仕上がるという。
一枚の手漉き和紙に込められた100年の歴史を感じて
藤原俊二さん
世界に誰一人同じ文字を書く人がいないのと同じように、手漉きの紙もまたどれだけ似たような見た目でも、同じものは一つとしてありません。自分だけが生み出すことのできる渾身の作品は、世界にたった1枚しかない紙に乗せる事で、よりその独自性・オリジナリティが際立つのではないでしょうか。昔に比べ今ではすっかり珍しいものになった手漉き和紙。ですがもし書道をする中で手に取る機会があれば、ぜひ一枚一枚の風合いや手触りの違いを感じてもらえたらと思います。同時にすべての紙に込められた、四国中央市で連綿と受け継がれてきた100年超の紙漉きの歴史にも思いを馳せてもらえると、手漉き職人としてこれ以上嬉しい事はありませんね。
会社:藤原製紙所
住所:〒799-0111 愛媛県四国中央市金生町下分1462-2
TEL:0896-56-4127